任天堂の新社長に6月末に就任する古川俊太郎取締役は日本経済新聞の取材に応じ、スマートフォン(スマホ)向けゲームで早期に現状の数倍の1000億円規模の売上高を目指すことを明らかにした。 業績急回復の原動力となったゲーム機「ニンテンドースイッチ」については、販売地域を中東や東南アジアにも広げ、収益拡大を図る。
「スイッチ」の好調で2018年3月期の連結営業利益が前の期の6倍に膨らんだが、古川氏はスイッチ以外の事業拡大を経営課題に掲げる。古川氏は「今見えている中で一番大きくしたいと思うのがスマホゲーム」と述べた。
任天堂は16年3月にスマホゲームに参入。これまで4本のゲームを配信してきた。ただ、キャラクター使用のライセンス収入などを含めたスマホゲーム関連部門の売上高は18年3月期で393億円と全体の4%にすぎない。
古川氏は「ゲーム機と同様に大きく化けるものが出るというのが任天堂ビジネスの本意」と語り、1本の爆発的なヒット作によりスマホゲーム事業を軌道に乗せる方針を示した。
任天堂は「スーパーマリオラン」などゲーム機で人気の自社キャラクターをスマホ用に特化して作り替えたゲームを開発してきた。参考にするのは米ナイアンティックが開発し、16年に世界的なブームとなった「ポケモンGO」だ。
古川氏とともに取材に応じた君島達己社長(6月末に相談役に就任)は「ストーリーや遊び方をスマホ向けに変えた『ポケモンGO』は大きな気づきになった」と語った。同作に匹敵するゲームを目指すが、古川氏は「(開発中のスマホゲームで)そういうものがあるとは言えない」とも指摘した。
スマホゲーム開発ではサイバーエージェントのゲーム事業子会社、サイゲームス(東京・渋谷)と資本提携する。協業先については「まずは開発現場での意気投合が重要」(古川氏)とした上で今後も拡大を示唆した。
スイッチでは販売地域を増やす。販売代理店を通じて中東や東南アジアを中心に拡販し、約50の国と地域での販売から広げる。スマホゲームへのアクセス数を見ながら参入エリアを検討する。古川氏は「30年以上にわたって日米欧という比較的同じ地域だけで販売してきた。それ以外の新しいことをする対応力に課題がある」と指摘した。
君島氏は古川氏を社長に引き上げた理由について「開発陣の能力の引き出し方を知っており、ここ2年間で次世代の経営の土台を作った実績がある」と語った。古川氏は自身を含む5人の取締役で作る経営会議で意思決定する。古川氏は「商品の目利きで優れている人は他にいて、それが理にかなっているか最終判断を下すのが自分の役割」と話した。
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