
刑が消滅しても前科が消えるわけではありません。前科とは「過去に有罪の裁判を受けた事実」を意味しますが、刑が消滅してもその事実自体がなくなるわけではないからです。
刑言渡しの効力の消滅
刑法27条及び34条の2は、刑の言渡しの効力の消滅について定める。この規定は、刑の言渡しによって失った資格および権利(後述、前科と制限を参照)を回復させる「復権」であると解されている。具体的には次の場合に刑の言渡しの効力が消滅する。
禁錮以上の刑の執行を終わり、またはその執行を免除された者が、罰金以上の刑に処せられないで10年以上経過したとき(刑法34条の2第1項前段)。
罰金以下の刑の執行を終わり、またはその執行を免除された者が、罰金以上の刑に処せられないで5年以上経過したとき(同項後段)。
刑の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予期間を経過したとき(同法27条)。
また、刑の免除の言渡しを受けた者が、言渡しが確定した後、罰金以上の刑に処せられないで2年以上経過したときは、刑の免除の言渡しは効力を失う(同法34条の2第2項)。
これらの場合も最高裁の判例によれば、「刑の言渡しを受けたという既往の事実そのものまで全くなくなるという意味ではない」とされる[4]。